サッカー戦術解説

ターンオーバー制とは?日本で広がらない?使い方やメリット・デメリットまで徹底解説!

2022年6月23日

ターンオーバーとは?

ターンオーバーとは、サッカーではリーグ戦やカップ戦といった試合に応じて、スターティングメンバーを大きく入れ替える起用方法のことです。

90分という時間を理論上動き続けるサッカーは、選手にかかる負担が非常に多いスポーツです。しかし、

  • リーグ戦
  • 国内カップ戦
  • CL・ACLといった大陸間大会

といった試合があれば、1週に2試合をこなすような過密日程となることも多くあります。疲労が蓄積した状態ではプレーの質が低下したり、怪我のリスクも高まってしまいます。

こういった過密日程を戦い続けるために、選手を休ませたり、チームにとって重要な試合に主力を温存するために、スタメンを大きく入れ替える起用方法をターンオーバーと言います。

欧州の強豪ではターンオーバーは珍しくない

欧州ではターンオーバーを導入しているチームが多くあります。

極端な例では、

  • リーグ戦メンバー(一般にこちらがトップチームとされる)
  • カップ戦メンバー

と、1つのクラブが事実上2つのチームを持つ体制でシーズンを戦うクラブも存在します。ビッククラブを率いる名将は、「過密日程をターンオーバーを導入しても勝ち続ける」ことが求められているのです。

ターンオーバーの使い方・導入されやすい試合

  • 格下相手との試合
  • カップ戦
  • 重要度の低い試合

ターンオーバーのメリット

ターンオーバー制のメリットについてご紹介していきます。

主力選手のコンディションを保つことができる:ターンオーバーのメリット

主力の怪我はチームに大きな影響を与える

様々なリーグやカップ戦を行うクラブチームでは、よくも悪くも「1試合ごとの重要度」はどうしても異なります。チームとしては「勝負どころの試合」はメンバー・コンディションともにベストの布陣で挑みたいところです。

また、どのような監督やチームでも、万一怪我をしてしまった場合どうすることもできません。

ターンオーバー制を導入し、主力選手のコンディションを整えつつ、過密日程を戦うことができます。

サブのメンバーの出場チャンスが増える

「試合に出場することができない」というのはプレーヤーとしてはかなりきついものです。「スーパーサブ」のような高い出場機会を与えられている選手ならまだいいものの、ベンチを温める日やベンチ外となる日が続けば、選手のモチベーションの低下やフラストレーションに繋がったり、若手育成の弊害となる可能性もあります。

しかし、ターンオーバーを導入することにより、サブのメンバーに出場できれば、アピールのチャンスが与えられるため、モチベーションの向上にもつながります。「ターンオーバーでの出場により序列が変化する」ことも珍しくありません。

有望な若手に試合経験を積ませることも可能で、育成や戦術的な選択肢が拡大します。

ターンオーバーを導入するデメリット

それでは逆に、ターンオーバーのデメリットについて見ていきましょう。

戦力が低下する可能性が高い:ターンオーバーのデメリット

スタメンの多くをサブのメンバーで挑むとなると、個々の能力においても、チームの連携においても通常時より劣る可能性が高まります。

加えて「偽9番」のように、戦術の核となる選手がいる場合、その選手を休まるには戦術の変更が免れません。

1発勝負のトーナメント戦では、ターンオーバーを敷いて、もし格下の相手に負けてしまえばタイトルも逃し、批判の対象となるなど本末転倒です。

サポーターやスポンサーへの配慮:ターンオーバーのデメリット

メインの選手を休ませれば、その選手を見にスタジアムまで足を運んだサポーターは残念に思うことは避けられません。

カップ戦を控えメンバー中心で挑めば、そのカップ戦を軽視しているとも捉えられてしまうかもしれません。

もちろん「チームのためにベストを尽くすためのターンオーバー」であることは間違いありませんが、サッカーは「興行」である以上、こういった声が出てきてしまう可能性もあります。

日本やJリーグではターンオーバーはあまり浸透していなかった

Jリーグでターンオーバーは、通称「ベストメンバー規定」の「補足事項」によって、浸透しにくい状態にありました。

Jリーグ規約において、以下のように「ベストメンバーで試合に望む義務がある」ことが定められています。

第42条〔最強のチームによる試合参加〕
Jクラブは、その時点における最強のチーム(ベストメンバー)をもって前条の試合に臨まなければならない。

この規定はJリーグ発足当初から存在しましたが、どのようなメンバーがベストなのかという定義はありませんでした。しかし、「(カップ戦)控え選手中心で戦う」旨を明言し、それを実行したクラブ現れた際に、

  • スター選手が見にきたサポーター・スポンサーへの配慮
  • 無気力試合の防止
  • totoなどに絡む八百長などの防止
  • カップ戦の権威が薄れる可能性がある

ことから、「直近5試合に先発した選手を6人以上スターティングメンバーに含まなければならない」という、「何がベストメンバーなのか」を定義した「補足基準」が制定され、違反した場合には罰金や勝ち点剥奪といった罰則が定められました。

しかし、罰則が適用されない大会ではこの規定が守られないこともあったほか、

  • クラブの強化方針や、強化施策の選択肢を拡大するため
  • 若手選手の育成を目的とした出場機会を作り出すため

に、この「直近5試合に先発した選手を6人以上スターティングメンバーに含まなければならない」という補足基準が2019年より撤廃されました。

現在でもこのベストメンバー規定は残るほか、罰則もあるものの、その定義が存在しないほか、「その時のベストメンバーを決めるのはチームである」こともあり、ターンオーバーを導入してもこのベストメンバー規定の罰則が適用される可能性は限りなく低くなりました。

しかし、この「補足基準」の撤廃が2019年シーズンからと比較的歴史が浅かったことが、日本でターンオーバー制が浸透しなかった原因の1つと言われています。

海外でもベストメンバー規定のようなものがあるリーグはあるものの、やはり定義がないなど曖昧なものが多いです。

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