サッカー戦術解説

キック・アンド・ラッシュとは?メリットやフォーメーションは?サッカー戦術解説!

2022年6月10日

キック・アンド・ラッシュとは?

キック・アンド・ラッシュ(kick and rush)とは、ロングボールを蹴ってボールを前に放り込み、前線の選手がそのボールを追いかけ攻撃するサッカーの戦術のことです。

「蹴って(kick)、走る(rush)」という言葉通り、DFは相手からボールを奪えば、すぐに前線の選手目掛けロングボールを行うため、中盤での細かいパス回しやビルドアップはほとんど省略します。

屈強なフィジカルをもつターゲットマンタイプや、空中戦の強いエアバトラーの選手をCFに配置することが多く、その選手のポストプレーや、アーリークロスなどでサイド攻撃を展開するのが基本戦術となります。

キックアンドラッシュのフォーメーション

4-4-2(2ボランチ)のフォーメーション
キック&ラッシュではトップ下が省略される場合も

基本的にキックアンドラッシュを用いる場合、最前線にターゲットとなるCFの選手を配置します。

また、キックアンドラッシュは「中盤の細かいつなぎを省略する」ため、トップ下を配置しないフォーメーションが採用されることが多いです。

センターハーフやボランチを2枚置く4-4-2のほか、センターフォワードとセカンドトップを配置するケース、ワントップとトップ下を用いるタイプなど、チームによって様々です。

イングランドの代表的な戦術

サッカーの母国である「イングランド」では、伝統的にこのキックアンドラッシュが好まれる傾向があります。

その結果、デイビット・ベッカムのようなクロスの名手、スコールズやランパード、ジェラードといったCMT〜ボランチを得意とする選手も生まれています。

プレミアリーグの特徴にも影響

上記のイングランドの伝統もあり、プレミアリーグでは、他のリーグに比べ、フィジカルコンタクトが激しいと言われています。

フィジカルの競り合いや球際の寄せも力強いことが多いほか、審判も厳しいタックルに対して寛容という指摘もあります。

しかし、「プレミアリーグ=キック&ラッシュ」というわけではなく、近代サッカーでは、ポゼッションサッカーやショートカウンターを強みとするチームも多くあり、そういったチームが結果を残しています。

参照:YAHOOニュース「プレミアの乱。到来した栄光の時と、「血の入れ替え」による必然。(外部リンク)」

キックアンドラッシュの歴史

キックアンドラッシュの歴史は、1900年前後まで遡ります。当時オフサイドのルールも現在とは異なったこともあり、「ボールを奪えばまずは大きくボールを蹴り出す」ことが主流でした。攻撃と守備で役割が分かれており、両チームが相手陣地にボールを蹴り合っていた時代であり、チームとしての動きなどはほとんどありませんでした。

ルールの変化やプレーの進化に合わせて、サッカーの戦術も様々なものが生まれていますが、このキックアンドラッシュは今でも採用されることがあります。

しかし、キックアンドラッシュでビックタイトルを獲得したチームが近年あまり見られず、限界も指摘されています。

試合終盤に導入されるパワープレイ

パワープレーとは、サッカーの試合終盤に、前線に多くの選手を配置して、ロングボールをゴール前に放り込み得点を狙う戦術のことです。

多くの場合、試合終了間際に負けているチームが、ゴール前に人数を残し、ビルドアップを省略してロングボールを連続的に放り込み、そのボールに直接合わせたり、こぼれ球により得点を狙います。

キックアンドラッシュのメリット

それでは、キックアンドラッシュのメリットについて見てきましょう。

失点しにくい:キックアンドラッシュのメリット

キックアンドラッシュは、ボールを奪えばすぐにロングボールを蹴るため、必然的に自陣のゴールとボールの距離が離れている時間が多くなります。

自陣の深い位置で相手にボールを奪われ、ショートカウンターを受ける可能性も減るため、失点するリスクを軽減することができます。

技術的なハードルが低く導入しやすい:キックアンドラッシュのメリット

キックアンドラッシュは「ボールを奪えば相手の深い位置に蹴る」ような戦術のため、そこまで技術が必要ではありません。

もちろんプロ選手ではその精度も一流ですが、少しロングボールがずれようが、競り合いの際にはターゲットマンと相手の勝負に持ち込ませることができます。ビルドアップなどのチームとしての連携も少なくて済むほか、守備面もリトリートを用いる場合最低限で済みます。

キックアンドラッシュは、前線の選手とさえマッチすれば、簡単に導入できるというメリットがあります。

相手DFにプレッシャーをかけ、ミスを狙える:キックアンドラッシュのメリット

何度も相手のDFとFWに向けボールを蹴りこむことになりますが、FWは空中戦に負けても相手ボールとなるだけですが、相手DFはミスをすれば一気にチャンスに陥ることになります。

ただディフェンスラインの裏に何度もボールを放り込まれるだけでも、相手は毎回ミスなく対応しなければならないほか、セカンドボールにも気を付けなければなりません。

非常に単純な戦術ですが、「競り合いに勝利することの重要性」では有利な勝負を仕掛け続けることができます。

キック&ラッシュは批判されることも

しかし、中盤の組み立てなどを行わないキックアンドラッシュは「ただ蹴って前の選手が走るだけ・攻撃が前線の選手の個人技や数名任せ」とも言えてしまいます。観客からしても「見ていてつまらない」「面白くない」「フィジカル任せ」と言われることもあり、「カテナチオと同様批判の対象にされがちです。

細かな技術を必要としないため、育成年代でも敬遠されることもあります。

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