「VAR」とは?
VARとは、ビデオアシスタントレフェリー(Video Assistant Referee)の略のことで、主審や副審とは別の場所で、映像を見ることで審判団をサポートする審判のことです。
VARは「最小限の干渉で最大の利益を得る」を理念としており、全てのプレーや判定などを下すわけではなく、「はっきりとした明確な間違い」をなくすことを目的としています。VARは常に試合をチェックしており、判定に対する助言などフィールドの審判団のサポートをしますが、介入する状況は限られている(下記参照)ほか、判定への決定権はありません。判定を決定するのは主審であり、VARからの助言を無視することも可能です。
基本的にVARの判定中は対象のプレーなどがモニターや映像にて流されるため、選手や観客も判定の結果がある程度予測できるほか、この判定に使用した時間はアディショナルタイムに加算されます。
OFR(オンフィールドレビュー)とは?VARの関連用語
オンフィールドレビューとは、VARによる主審への助言後に、主審が該当するシーンをビデオモニターにてチェックし、自身の判定を確認することです。
- 選手同士の接触はファウルに値するか
- ノーマルフットボールコンタクトか否か
といった、「主観的な判定が必要」の場合に採用され、主審はTVシグナルを行ってからRRA(レフェリーレビューエリア)にて、映像を確認したのち、再度TVシグナルを行ってから最終判断を下します。
VARオンリーレビューとは?VARの関連用語
VARが確認した際に「明らかな事実」のような主観が必要ない場合には、主審はVARのアドバイスから、OFR(オンフィールドレビュー)をせずに判定継続、覆すことができます。
例えば「オフサイドポジションであったかオンサイドか」「PKか直接FKの位置」など、誰から見ても明らかな判定が出る場合には、VARが主審に伝え、OFR(オンフィールドレビュー)をせずとも判定を継続・撤回することができます。
すなわち、判定を覆すのにOFR(オンフィールドレビュー)は必須ではありません。
オフサイドが曖昧なケースで副審がすぐに旗をあげずにプレーを継続させることを「オフサイドディレイ」と言います。
VARの流れ
VARは以下のような流れで行います。
- 対象となるプレーなどの発生
- VARがチェックしていることを主審に伝達(このとき主審は耳に手を当てるシグナル)
- チェックで判定に問題がない場合チェックが完了したことを伝え試合再開
- VARがレビューが必要と判断した場合、または明らかな事実の誤審がある場合主審に提案
- OFR(オンフィールドレビュー)またはVARオンリーレビューを実施(OFRはアウトオブプレーになった時のみ)
- 映像確認後、主審が最終判定を提出
テニスのチャレンジ制度などと異なり、OFRなどは監督や選手からの抗議によって行われるものではありません。
VARが使用される対象は?
VARが使用されるタイミングは、以下の4つと「主審が確認できなかった重要な事象」であり、「明らかな誤審」や「重大な見逃し」の可能性がある場合のみとなっています。
- ゴールが認められるかどうか
- PKとなるかどうか
- 退場となるかどうか
- イエローカードやレッドカードの間違い
原則これらの場面ではVARが介入することはありません。それぞれについて解説していきます。
ゴールが認められるかどうか
得点が決まった際、または決まったかどうか曖昧なシーンにおいて、
- ボールがゴールラインを完全に超えたか否か
- 何らかの反則がなかったか
- オフサイドがなかったか
などが確認されます。
PKかどうか
PKが与えられるかどうかとう状況において、
- その反則があったか
- 起きた場所はペナルティエリア内か否か
- PKに値する反則か
退場かどうか
レッドカードが掲示される、または掲示される案件に関し、
などが確認されます。
警告・退場などの人間違いの防止
イエローカードやレッドカードの対象となっているプレーヤーが間違っていないかなどを確認します。
サッカーキング「プレミアリーグでまたも誤審…人違いでレッドカードを提示した主審が謝罪」(外部リンク)
主審が確認できなかった重大な事象
- プレーと関係ない場所での悪質な行為
- 主審が見えていない箇所での重大な事象
などがあった場合に、VARによる助言が行われます。
三重罰とVARの関係
一度のファウルで「PK献上」「退場」「次節出場停止」が与えられる三重罰の可能性がある場合、「PKかどうか」「退場かどうか」という2つの条件を満たしているため、VAR、OFRの対象となるケースが多いです。
VARの効果は?批判は?
VARは、2018年に導入されて以降、下記のような効果が指摘されています。
VARにより「神の手」のような誤審が発生する可能性は限りなく低くなったと言えるでしょう。
しかし、
- レビューにも誤審がある
- 試合の流れが止まってしまう
- つまらなくなった
など、様々な否定的意見があるのもまた事実です。